辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました

 気を利かせたリティは、ひとまず考えなければならなそうなことから意識を逸らして部屋の外へ出た。

 扉を閉めてすぐ、廊下の柱に隠れ切れていない長身の影を見つける。

「トリスタン、盗み聞きなんてあなたらしくないわよ」

「……俺じゃない。ジョエルがやろうと言ったんだ」

 ぬっと柱の影から現れた男は、リティによく似た蒼氷色の髪と新緑の瞳をしていた。

 がっしりとした体格はマルセルに似ていたが、彼のように熊らしさはない。鍛え抜かれた大剣のような無骨さと威圧感を与える男だった。

「俺のせいにするんじゃないよ。乗り気だったくせに」