だから私も、いつか誰かに、そんなふうに言ってあげられるような人間になりたい。



「私にそれを教えてくれたのは、友利 洸大ってひと」


「…ははっ、───…みんな友利かあ」



小さくつぶやいて、くしゃりと前髪をいじった久賀くん。

まだ完全に認めてあげられてない。
完全に許すことも、できていない。


でも、でも。


私の言葉が友利の言葉のように、彼に少しでも届いてくれたなら。

今はそれだけでいいから。



「じゃあ俺は帰るよ。勉強、ありがと」



立ち上がった久賀くんは、雲が多くなってきた空を見上げて「早見も早く帰ったほうがいいよ」と、ついでに言ってから。



「それと」



と、こちらがメインだったかのように続けた。



「…野球部マネージャーの森 静奈って子。あいつは昔から強気な奴だから性格悪すぎてワガママ女王様だけど、……できたら仲良くしてやって」


「……え」



なぜ久賀くんが彼女のことを。

質問する前には、東屋にひとり。