「蒼、何してるの?」
後ろからまた知らない人の声が聞こえてバッと振り返る。
そこにいたのは…にっこりと笑顔を浮かべたこの学園の生徒会長である、黒崎先輩だった。
なんだろう、さっきとは違って怒ってるように見えるけど…
「朔夜か!驚かせんなよ〜」
「驚いたのはこっちだよ、急に「司のとこ行ってくる!」なんて言っていなくなるし、中々返ってこないし…」
「うっ」
心当たりがあるのか言い返せない蒼くんにまだまだというように言葉で詰めていく黒崎先輩。
「かと思ったら司と楽しそうに測定してる始末…」
「うっ、いや戻ろうとは思ってたんだけど…」
「あれ、それ何回目だっけ?」
「ぐぅ…」
「言い訳はいいから」
完全に論破されてはい…とうなだれた蒼くんを見て思わず呆然とする。
黒崎先輩すごい…
蒼くんは出会った時から掴みどころがなくて言葉巧みに話して、まるでマジシャンみたいに真意を隠す。
その彼を簡単に言い負かしてしまった事実に驚き、それと同時に流石生徒会長…と感心する。
ちなみに司先輩は何やってんだ…と呆れた目を向けていた。
「蒼が迷惑かけたね、司」
こちらを振り返って司先輩に話しかけた黒崎先輩。
この二人も友達なのかな?
「いやいい、久しぶりに競えたし」
「へぇ、じゃあ俺も50m走のリベンジで再戦でも挑もうかな?」
にやりと笑ったその顔はさっきまでの爽やかな生徒会長ではなく、勝負に闘志を燃やすただの負けず嫌いの男の子の顔だった。
「いいけど、それはまた今度な」
「だね、はぁもうお預けってのはいただけないけど仕方ないか。ほら蒼、後片付け頼まれてるんだから行くよ」
「あーい」
渋々といった様子で黒崎先輩についていく蒼くん。
「じゃあね、司。それと橘さん」
振り返った黒崎先輩はまたにこりと笑みを浮かべたけど、まるで何を考えているのか分からなくて、少し不気味に感じた。
