司先輩、甘すぎです…

「本当ですか?」
「あぁ、勝負事になるとついつい二人とも熱くなってな…」
クレーンゲームで遊んだ時の悔しそうな先輩がふと脳裏に浮かんで、納得して頷く。
「先輩って確かに負けず嫌いですもんね…」
「…まぁな」
「嘘じゃん、納得しちゃったよ…」
何かぼそっと呟いた蒼くんの言葉は私には聞こえなかった。

「ま、とにかく体力測定再開するか!」
「…そうだな」
意気揚々とそう宣言した蒼くんに連れられて、三人で測定することになったけど…

「桐谷、ハンドボール投げ記録、ボール飛び過ぎて行方不明だから測定不能!」
「一条!シャトルランもういいから止まれ!200回超えてるしちゃんと10点だから!」
「握力測定の機器壊すなよ…お前ら」

まさかここまで運動神経がいいなんて…
なんで握力測定するだけで機器が壊れるんだろう?
「おい蒼。次反復横跳びで勝負だ」
「美琴ちゃんの前だからって、手加減しねぇよ?」
「は、上等。てか手加減できるほど余裕じゃねぇだろ」

ばちばちと火花を散らしている二人に私は呆然とする。
そして今更気づいた。これ、組む人間違えたかもしれない、と。
だってこんな運動神経良い人についていけるわけがない。
相手は今のところ全部10点だよ?対して…私は頑張って5点いくかいかないか。
もはや驚くことしかできない。
「美琴の握力はどうだったんだ?」
そういえば、と呟いて測定の順番を待っている間に聞いてきた先輩。

「25kgです」
「…弱いな」
「間をおいて言わないでください、喧嘩売ってますか?あと握力は平均です!」
少しムキになってそう答えると心底不思議そうな顔をする先輩。
「平均?…25が?」
「司〜わかってないな、女の子はそれぐらいたぞ?」
先輩の肩に腕をのせて呆れたようにそう言った蒼くんに同調して頷く。
「そうなのか…知らなかった」
「まぁ馬鹿力のお前と比べたら誰だって弱いだろ!」
「それだけはお前に言われたくない」

仲やっぱいいなぁ…
テンポのいい会話に二人の親しさを感じて私は笑みを浮かべた。