司先輩、甘すぎです…

うん、この人誰だろう?
そう思いながら、そのその子から離れ先輩が走っているところがよく見える場所に移動する。

「じゃあ位置について、よーいどん!」
先生の掛け声とともに先輩達が走り出す。
司先輩は綺麗なフォームで風を切るように、早く走っている。颯爽と駆け抜ける綺麗な横顔に、女の子からまた歓声が上がる。
先輩かっこいいな…
真剣そうな顔にドキッと胸が高鳴った。
隣のレーンの黒崎先輩と司先輩は最初は並んでいたけど、途中で加速した先輩が抜いてゴールした。
「桐谷、タイム6.5秒!黒崎6.7秒!」
「ええっ速っ!?」
ストップウォッチを持った先生も私と同じくらいの驚いた顔でポカンとしている。
いやいや、6.5秒って男の子でもだいぶ速いよね?
なのになんでちょっと残念そうな顔してるんですか、先輩…。
そう思って見つめていると、先輩とばちっと視線が絡み合う。
なんかデジャブだな…
心なしか先輩がこちらに向かって走ってきているような気がするんだけど…気のせいかな?
司先輩のファンの人たちからの視線が気になるのも気のせいだと思いたい…

「司様っ!すごく良かったです、もし良かったらこのタオルどうぞ!」
「司様、お疲れ様です!スポドリ良かったら受け取ってください!」
「司くんすごくかっこよかったよ、私見惚れちゃった…!」
先輩を呼び止めてスポーツタオルを差し出した勇気ある女の子を筆頭に、あっという間に女の子に囲まれた先輩。
「そういうのいらねぇし、迷惑。」
「っ…」
好意を隠すことなくアピールしている女の子達に、先輩は顔を顰めてそう言い放った。
今まで見たことがないぐらい冷たい目を女の子達に向けている。
…司先輩の教室に行ったあの日、一瞬だけ向けられたあの眼差しと似ている。
でも今のそれは明らかに拒絶の色をしていた。