司先輩、甘すぎです…



結果は意外にも一位は音ではなく、今日の朝凌くんをからかっていた一ノ瀬くんだった。
(ちなみに私は5位だった。)
まさか音が負けるなんて…
客観的に見れば、女の子なんだから男の子よりも遅いのは当たり前だけど、音は例外で普通の男子よりも速い。
陸上部のエース(男子)に勝負を挑まれていい勝負をするくらいには俊足だし、運動神経も抜群だからか、あまり音が負けるという想像がつかなかった。
もちろん当の本人はとても悔しそうだったけど、一ノ瀬くんに「すごいな、お前…」と純粋に尊敬の視線を向けていた。
ちなみに一ノ瀬くんは汗を拭いながら、「宮代さんも速いだろ。何かしてた?」と爽やかに笑って、楽しそうに話している。

ここから何かが始まりそうな気がするのは私の気のせいだろうか…

「おつかれ」
司先輩に水筒を渡されてはっと我に返った。
危ない危ない…。
なんかいい感じの音と一ノ瀬くんを見ていたら、思わず思考が飛んでいってしまった。

「ありがとうございます!」
「美琴って意外と足速いんだな…」
「ちょっと待ってください!失礼じゃないですか!?」
今のは聞き捨てならない…。
「いや…初めて会った時、すげぇ天然なイメージあったから。」
少し申し訳なさそうな目を向けられたので、許すとしよう。

まぁ怒ってないし。…それにちょっと図星だし…
「別にいいですよ、怒ってないです!
それに私、去年よりも記録縮められたので今はむしろ嬉しいですから。」
そう、今回のタイムは8.2秒で去年より0.5秒縮んだんだ。
これは得意げに言ってもいいと思うんだよね!
「すげえじゃん、頑張ったな。」
よしよしと自然に頭を撫でられて思考が一瞬止まる。
……、え、え!?どういうこと…!?