酔っ払いが近寄りソフィーは後ずさる。

「俺らにかまうな、先を急いでいるんだ。屋敷に行かなくちゃならないんだ」

「屋敷だと?」
「おお、あなたはケイネ伯家のギース様ではないですか」
「あの放蕩息子の」
「確か家から勘当されたって話だが」

 酔いに任せて言いたい放題だ。

「するとこの娘はケイネ様のお屋敷に行くのか」
「お屋形様は女好きで有名だからな」
「するとお前もあの方の寝所にはべるのかい」

 ソフィーが息をのむ。

「だったら先に俺達と付き合っちゃくれないか」
「いい所があるんだ、すぐそこの空き家だ」
 と前方の廃墟を指さした。

 ギースがあわてて、
「何度言ったらわかるんだ、この娘は俺の屋敷にだな」

「わかっていますよ。その前に我々と付き合ってもらえばいいって話で」
 いうなり手をかけた、ソフィーは必死に振り払おうとする。

 対岸の騎士がそれを見ていた。

 娘が廃墟に連れ込まれようとしている。
 辺りを見渡した。近くに橋はない、遥か彼方にそれらしいものが見えるだけだ。舌打ちをして馬首を変える。

「お待ちください、アーロン様」
 騎士は走り出し臣下が慌てて後を追った。