逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

「それが本当なら大変なことじゃないか」

 と言ってからふと気が付いて、

「だが地元のそんな話をよく知っているな。お前は王宮の兵だろう、王都で暮らしていたくせに」

「ああ、言ってなかったっけ俺はラクレスの出身なんだよ。ここには親がいるからときどき帰っている。それに元はラクレス領の兵だったんだ」
「ラクレスの兵だった?」

「王宮の騎士にあこがれて志願したんだ。それで王宮兵士には採用された」
 けっきょく騎士にはなれなかったが、と頭を掻いた。

「それならこの洞窟だって危ないだろう。バッハスに知れてしまえばどうするんだ」

「一網打尽だな。戦える男がいない、負傷兵ばかりなんだから」
 仕方がないさ、と笑った。


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