二人の間を流れる川、その上流から風が吹いてきた。
 ソフィーの髪が煽られる。手で押えようとしたが風は強くなる、じっとしてやむのを待った。

 騎士は馬を止めてそれを見ている。
 妙に憐れをさそう姿だった。

「どうかなさったので」
 臣下が声をかける。

「いや、なんでもない」
 我に返ってまた手綱を引いた。
 川を挟んで二つの影は西と東に別れていく。

「早く歩くんだ、世話をやかせるな」
 ギースがせっついてくる。

 二人の前に居酒屋があった。
 戸口から酔っ払いが出て来る。その目にソフィーが映った。

「ねーちゃん、どこへ行くんだい」
「お前けっこう美人じゃないか」

 そんな声が対岸に流れた。
 騎士が再び馬を止める。