逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 マリンドウ王はひとしきり王子を抱いた後で、これまた意外なことを言った。
「さあいっしょに帰ろう。マリンドウで母上が待っているぞ」
「はいっ」
 王子が嬉しそうにすがりつく。

 アーロンらが目を丸める。

 グリンドラ妃はおもむろに笑いかけて、
「びっくりするでしょうが」
「はい?」

「王子は亡くなったグリンドラ王の子ではないのです」
 微笑みながらあっけらかんと言う。
「はいっ?」

 空気を察して王妃が、
「疑っちゃいけないわ、私は不倫をした訳ではありませんからね」
「はあ・・」

「亡くなった王は、その、子供が出来ない体質だったのです。本人もそれをご存じで」
 あっけにとられる一同に、
「でも、王の他にこの国の後継者はいないでしょう」