逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 湖に異変が起きたのは翌朝のことだった。

 保守兵が湖底を覗き込んでいる。
「大変だ、流木が引っ掛かっているぞ」

「流木だって? 引っ掛かっているとはどういう事なんだ」
 ア―ロンが聞く。

「水門の内側にそれが引っ掛かって、桟が動かせないんです」
 指さす下方に、なるほど大木の影が見える。

「きのうは何ともなかったのに、さっき見たらこうなっていたんだ」
 上流から運ばれたのだろう巨大な木だった。

「動かせないとどうなるんだ」
「放流が出来ません。それにあの大きさだと水の動きで桟にぶつかるかもしれません」