逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 カンカンと槌の音が響く。

 アーロンと部下が滞在するための天幕を張っているのだ。数日ここに留まって岩盤や放流経路を調査するらしい。

 そんな様子をソフィーが見ていた。

 突然アーロンの息子という人物がやって来た。
 総勢二十人を連れて来た彼は、仕草も姿もあのアーロンにそっくりだ。声を聞いていれば別人とは思えない、ただ歳だけが違っていた。

 なにかが引っ掛かって仕方がない。

 部下の中には色白の青年がいた。
 ソフィーを見るたび笑いかけてくる。

 アーロン二世と同じく三十前後の青年だ。どこかで見たような気はした。
 
「忘れたのか俺を」
 と意味ありげに見つめ、
「それでもいいか、これから付き合っていけばいいって話だからな」