逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ

 アーロン邸の応接間にシュテルツが立っている。

 落ち着き払って使者を迎えた。

「あの、ハインツ閣下はどこにおられますか」
 当然ながら聞いてくる。

「その前に私が仔細を聞いておこう。急にどうしたのだ」

「偵察隊からの知らせです。バッハスが大量に兵を集めています、まるで総動員をかけるようだと。それで彼らを訓練場に送り込んでいるのです」

「すると、やはりこのグリント―ルに攻めてくるつもりか」
「それ以外に考えられないと」

 今まで国境での小競り合いはあった。
 だが今回はまったく違っている。