「んー…九条先輩のことになると、案外出てるかも」
「ひぃ…」
それはまずい。
「大丈夫だよ。それだけ九条先輩が、海琴ちゃんの心を動かしてるってことなんじゃない?…なんて、分からないけどね」
えへへ、と笑う穂乃果ちゃん。
それを聞いて、私の胸がドクンと跳ねる。
全身が、なるちゃんに会いたいと叫んでるみたいに動きたくて堪らなくなった。
「…私、ちょっと行ってくる。…いいかな?」
「もう、なに言ってるの海琴ちゃん。良いに決まってるでしょ?」
「ありがとう!」
「帰ってきたら惚気話聞かせてね〜?」
「もうっ、穂乃果ちゃん!」
「あはは、冗談だよ。行ってらっしゃい」
その声を背中で聞いて、部屋を飛び出した。
*
「って…ここどこ?」
部屋を出て早数分後。
あんなに意気揚々と来たのに、もう見知らぬ景色に頭を悩ませている。
そういえば、この旅館を一人で歩いたことがないような…?
方向音痴ではないと思うのだけれど、あまりにも覚えがなさすぎてそうなんじゃないかと思ってきた。
とりあえず1階に来てみたものの、ここからどこへ行けばいいのやら。
スマホを持ってないのが致命的すぎるね。



