花を手向けるということ。


 自室は家の二階の最奥にある。家族がわたしと会わなくて済むように。

 薄暗く、夕陽だけが差し込む自室に入ると、机の前の座布団にそっと座った。

 疲れた。いつもならあんな風に会話をすることはほとんどない。ましてや、自分から何かを問いかけることなんて……

 あの施設のことは、色々なところで耳にする。どれも悪い噂ばかり。

 殺人犯の集まりだ。とか、この町を崩壊させようとしている。だとか……根も葉もない噂でいつも井戸端会議は盛り上がっている。

 楢島さんはいい人だと思うけれど、あの施設で暮らしている人と会ったことは一度もない。
 どんな人がいるのか、過去に何をしたのか……知る由もない。

 学校の人たちも、あの施設の人たちを悪く言っているらしい。
 そんな大勢の人に良く思われていないのに、どうして楢島さんは……

 ううん、なるべく関わってはいけない……。
 噂が本当なら、なにかトラブルが起きたとき、最悪命はないかもしれない。