会ったことのない夫フェリクス・ラングランは、ジラルデ帝国の将軍のひとりである。ラングラン侯爵家は、初代が戦争で大活躍し、その功績を称えられて侯爵という爵位をもらったのだとか。以降、男子のほとんどが軍人として帝国に仕えている。

 フェリクスは幼少期こそ領地にあるこの屋敷で育ったけれど、軍の幼年学校に入学してからはほとんど帰ってくることがなかった。そして、そのまま軍に身を投じてあっという間に出世し、出世してからも自軍とともに駐屯地にいるから帰ってくることはなかった。

 それが今回、なにがあったのか突然帰ってきた。