「気がつきましたか?」

 少しだけ開けたカーテンの隙間から、ほのかな光が射しこんでいる。

 まだ月光の残る深更から明け方にかわりつつあるひととき。

 ぐっすり眠っていたフェリクスの瞼がわずかに動いた。

 そして、小さなうめき声とともにその瞼が開いた。

 翡翠色の瞳はあてどもなく宙をさまよっていたけれど、ほどなくして焦点が合ってこちらに向いた。