「おれのことは、どうでもいいことだ。しかし、利用されるだけ利用されて殺されるであろう彼女を、王子といっしょに行かせるわけにはいかん」
「閣下、いいかげんにして下さい。このままだと、アイ様に誤解されたままになります」
「閣下、ピエールの言う通りです。あなたは、アイ様のことを愛おしく、さらにはかけがえのないほど大切に想っているのです。それを、そのことを黙ったままでいるなんて。おれたちには、これ以上耐えられそうにありません」
「パトリス、やめろっ」

 フェリクスの怒鳴り声に、さらに言い募ろうとしていたパトリスは口を閉じた。

 ただ、その翡翠色の瞳は、ずっとわたしを捕えて離さない。そして、わたしもまた彼の瞳を見つめたままでいる。