エルキュールがいた牧場の主は、彼らの知り合いのようだった。だから、彼らがこのラングラン侯爵領を訪れた際には、その牧場で寝泊まりしているらしい。

 街の宿屋を利用していると思い込んでいたけれど、そうではなかったわけ。

 それはともかく、エルキュールと合流してからすぐにその牧場を出発した。

 二頭立ての馬車で。

 まるでこうなることがわかっていたかのように、すでに馬車に荷物を積んで出発の準備が整っていたのである。

 馭者はまだ若い青年二人で、牧場で働いているようには感じられない物々しい雰囲気が漂っている。

 いままさしく、その準備されていた馬車内にいる。