「さあ、乗って」

 奇蹟にも近いグッドタイミングで現れたジョフロワは、わたしに右手を差し出した。

 考える暇があるわけがない。また転びそうになったこともあり、それこそすがるような思いでその右手を取った。取ったというより、がっしり握ったという方がより近かったかもしれない。

 彼の手に力がこもったのがわかった。

(わたしをこのまま馬上に引き上げるの? ムリにきまっているわ)

 わたしが太ったかどうかは別にしても、けっして軽くはない。それを片手で引き上げるなんて、とてもではないけれどムリである。

 巨躯のフェリクスだったら出来るでしょうけれど。

 が、不意に体が宙に浮いた。