「というか、警告したいことがあるの」

(警告……)

 内容は、きかなくてもわかっている。

 ここに乗り込んできて彼の妻であるわたしと対峙し、警告することといえばひとつしかない。

『フェリクスと別れなさい』

 この一語に尽きる。というか、それしか考えられない。すくなくとも、書物の中では愛人はそう叫んだり怒鳴ったりする。あるいは、脅したりすかしたりするものである。

「アイ様、このレディはだれなのですか?」
「ラングラン侯爵家の屋敷に乗り込んできて、アイ様にエラそうに言うこのレディはだれなのですか?」

 かたまったままのわたしに、ヴェロニク、それからロマーヌがきいてきた。

(こんな場面、だれでも驚くだろうし不思議に思うわよね)

 他人事のように考えてしまう。