「侯爵夫人。わたしのこと、知っているわよね?」

 フェリクスの愛人が突進してきた。が、わたしは身動き一つ出来ない。

「わたしのこと、フェリクスからきいているわよね? だから、自己紹介なしで大丈夫よね?」

 彼女は、手を伸ばせばすぐ届く位置で急停止した。両手を腰に当ててわたしを見おろすその姿は、迫力と威圧感満載である。