「わたしは、ラングラン侯爵夫人です。夫が帰って来ていることもあります。わたしの身勝手で家をあけたり、ましてやジラルデ帝国から出て行くことは出来ません」
「それはわかっています。わかっていて、あえてお願いしているのです」

 いまや痛いほど、彼に手を握りしめられている。

(このままでは、うんと言うまで帰らせてくれないわね)

 そんな勢いである。