「申し訳ありません。ですが、わたし自身が散在していることは事実です。その内容が、ドレスや貴金属や絵画ではないというだけのことです」
「きみは、かわっているな」

 彼は椅子の背に大きな背中をあずけつつ、また小さく笑った。

「まぁいい。きみの問題の話をしよう。アムラン王国に行きたいというのだな? 流行り病を癒しに? あるいは、加護をする為に? それは、あの男の要請なのか?」
「あの男?」

 またもや彼の言っていることがわからなかった。

 しかし、すぐに思いいたった。

 ジョフロワのことだ、と。