「座ってくれ」

 その瞬間、彼が大きな溜息とともにその一語を吐き出した。手で長椅子を示しつつ。

 その通りにするにきまっている。

 長椅子にそそくさと腰かけた。

「散財か?」

 彼は、そうつぶやいてから小さく笑った。

 ごつい顔の両頬に出来たえくぼを目の当たりにし、なぜか驚きよりもほんわかした。