パッケージを開けてみると、その中身は、更に恐ろしいことになっていた。

「わー。凄い、真っ黒だね〜」

「あぁ。…ヤバそうだな」

「ヤバいねー」

普通インスタントラーメンの麺って、黄色っぽいじゃん?黄金色って言うか。

それなのにこのインスタントラーメンは、黒い。

イカスミパスタか?って思うくらい黒い。

麺も黒いし、何なら粉末スープの粉も黒い。

何これ?マジで何味なんだ?

粉末スープをお湯に溶かしてみると、あっという間にスープが真っ黒に染まった。

黒っ…。何だこのスープ。

青薔薇味なのに、青の要素が全くない。

むしろ、黒薔薇味では?

大丈夫だよな?これ。デフォルトでこういうものなんだよな?

カビてる…とかじゃないよな?

そっと手で仰いで、スープの匂いを嗅いでみたところ。

カビ臭い匂いはしなかった。一応。

じゃあ、やっぱりデフォルトでこういう食べ物なのか…。

麺を茹でて、スープの中に投入。

漆黒のスープの中に、漆黒の麺が泳いでいる。

中身見えないんだけど。マジで何なの?このラーメン。

「わー。真っ黒だね、悠理君。まっくろくろ〜」

この見るからにヤバそうなラーメン(?)を見て、楽しそうに歓声あげてるのは寿々花さんだけだよ。

トッピングとして、朝作ったばかりの煮卵と切ったネギ、そして市販のチャーシューを切って入れてみる。

あっという間に、煮卵とチャーシューが漆黒に染まっていった。

怖っ…。

でも…異臭はしないな。不思議と…。

空気清浄機も、まだ動かす必要はなさそうだ。

「悠理君、出来た?もう食べて良い?」

「良いよ…。良いけど、やっぱり怪しいから俺が先に毒見してから…」

「わーい。いただきまーす」

「ちょ、馬鹿。早まるなって!」

寿々花さんは何の躊躇いもなく、割り箸をパキッと割ってラーメンを啜り始めた。

俺が先に毒見する、って言ったじゃん。

あんた、恐れ知らずにも程があるぞ。

こんないかにもヤバそうな漆黒ラーメンを、何の躊躇いもなく啜るなんて…。

しかも、けろっとした顔して。

「もぐもぐ。ずるずる。もぐもぐ」

…普通に食ってるけど。

しかし忘れるな。寿々花さんは元々悪食なのか何なのか知らないが、不味いケミカルラーメンでも普通に食べていた。

一般人とは味覚が違うんだよ。

それでも俺は、聞かずにはいられなかった。

「ど…どうだ?味…」

イカスミ?イカスミの味がするのか?やっぱり。

「うん、美味しいよ。これ」

寿々花さんは、けろっとそう答え。

普通のラーメンを食べるみたいに、味わいながら食べていた。

…本気か?正気なのか?

こんな、いかにも怪しい色をしてるのに…?

「悠理君も食べてみて。凄く美味しいから」

「本当に…?また薬臭い味しないよな…?」

「うん。さっぱり系だね、これ。美味しい」

この色でさっぱり系?そんなまさか。
 
何処からどう見ても、特濃こってり系だろ。

俺は恐る恐る、レンゲでスープをすくって口に入れてみた。