…俺の誕生日が終わった、数日後。

俺はその日、ちょっとした戦いに挑もうとしていた。

と、言うのも…。






「…よし、寿々花さん。戸締まりは確認したな?」

「うん。全部の窓閉めたよー」

「新品の脱臭剤の用意は?」

「ここにあるよ。いっぱい買ったねー」

「通販で買ったばかりの、空気清浄機の様子は?」

「ちょっと待ってね。スタートボタンをピッ…。うん、ちゃんと動くよ」

「よし」

準備は完璧だな。

これなら、始めても良さそうだ。

「良いか。危なそうな香りがしたら、すぐ廃棄だからな」

「大丈夫だよ、今度はきっと」

何故そんなに楽観的なのか。

これまで散々、酷い目に遭わされたのを忘れたか。

俺はもう信用しないぞ。…「コレ」を。

そう、「コレ」とはすなわち、寿々花さんが『ブルーローズ・ドリーム号』で買ってきたお土産。

いかにも怪しげな、外国産のインスタントラーメンである。

本日の昼食は、このインスタントラーメンにするつもりなのだ。

…前回前々回と、ろくな目に遭ってないからな。

凄まじい臭気、そしてケミカルで危険な味。

一応、今のところ腹を壊していないのが奇跡みたいなもんだ。

そこで今回は、様々な対策を講じてみた。

まず、異臭に備えて家中の窓を閉め、外部に異臭が漏れるのを防ぐ。

同時に、ダースで買ってきた超強力脱臭剤(新品)を用意。

極めつけは、通販で買ったこの新しい空気清浄機だ。

どんな異臭でも耐えられるように、かなり高性能なものを購入した。

これで異臭対策は完璧。

安心して、このインスタントラーメンを開けられるぞ。

…まぁ、味の方は対策のしようがないんだが。

一応、口直しにお茶漬けと梅干くらいは用意しておこう。

…え?何でそこまでして、そのインスタントラーメンを食べようとするのかって?

勿体ないだろ。このまま戸棚の肥やしにしたら。

その為に空気清浄機をわざわざ買う方が勿体ないだろって?

…確かに。

それはともかく。

「よし。それじゃ…作るからな」

「おー。頑張ろー」

今日作るインスタントラーメンは、寿々花さんが買ってきたお土産ラインナップの中でも、特にヤバそうな代物である。

『ブルーローズ・ドリーム号』限定、青薔薇味のインスタントラーメンだ。

何なんだよ。青薔薇味って。

バラに味なんかあるの?全然想像がつかないんだけど。

パッケージは謎にドス黒いし、何て書いてあるか読めないから、作り方もよく分からないし。

…普通のインスタントラーメンみたいに作って良いんだよな?多分。