さて、翌日。

無月院本家のお嬢さんと暮らす、二日目の朝である。

俺はいつも通り、朝6時に目を覚ました。

目覚まし時計の類はセットしていなかったが、体内時計で目が覚めてしまう。

今日も忙しくなりそうだ。

キッチンに立って、まずは朝ご飯を作ろう…と思ったのだが。

…果たしてあのお嬢さん、朝ご飯は何を食べるのだろう?

朝は和食派か洋食派か、それだけでも昨日、聞いておけば良かった。

俺の実家は、ずっと朝は和食派で…ご飯と味噌汁と漬物、が定番だったんだが…。

食パンとか、コーンフレーク食べる家庭も多いし。

そもそも、朝ご飯を食べない層も一定数居ると記憶している。

朝はきちんと食べた方が良いと思うけどな、俺は…。

どうしようかと少し考えて。

結局いつも通りご飯を炊き、味噌汁を作り、大根の糠漬けを切って食卓に並べた。

この大根の糠漬けは、スーパーで買ってきたものではない。

自家製の糠床で、自分で漬けたものである。

え?貧乏臭い?所帯染みてる?

美味いから良いんだよ。

もしお嬢さんが洋食じゃないと嫌だと言ったら、そのときはまぁ…コンビニに走るよ。

それ以前にあの人、起きてこないんだが。

昨日散々昼寝してたのに、朝も起きるの遅いのか?

寝過ぎだよ。いくらなんでも。

まぁ、昨日の…部屋の散らかり具合から察するに。

恐らく、とんでもなく自堕落な性格をしているのだろう。

今は春休みだから良いけど、新学期始まったらどうするんだろう。

もしかして、朝彼女を起こすのも俺の仕事なんだろうか。

ルームメイトとは言え、女性の寝室にズケズケ入っていって叩き起こすのは、気が引けるんだが?

出来れば自分で起きてきて欲しい。

そこで、俺はお嬢さんが自然に目を覚ますまで、放置して待つことにした。

荷物の片付けや、昨日手が回らなかった部屋の掃除などをしながら、待つこと数時間。

「おはよ〜…」

「あぁ。おはよう…」

眠い目をこすりながら、お嬢さんがようやく起床。

一応、ちゃんと午前中に起きてきたな。

あんまり起きてこないから、もう昼過ぎまで寝てんのかと思った。

それよりも。

お嬢さんの格好を見て、俺は思わず噴き出しそうになった。

「何なんだ。その格好は…?」

「ふぇ?」

ふぇ、じゃなくて。

お嬢さんは、寝間着のままだった。

自分の部屋で着替えてから降りてこいよ、最低限の身だしなみだろ…と思ったが、それは百歩譲って良しとしよう。

昨日まで、このデカい家で一人暮らしだったんだもんな。

寝間着姿でうろうろしても、誰にも見られないんだから、咎められることもなかったのだろう。

だから百歩譲って、寝間着姿で降りてくるのは良い。

だが、そのぴっちぴちのジャージ姿は何なんだ?