「うーっ,なんでよ! 本命とかって,ほんとはそんなのいないんでしょ?! もうどんだけ経ってると思ってんの?」
「いるよ,うそじゃない」
「ぜーったいウソ! どんだけ待って探っても,浮いた話1個もないし……だいったいね,分かってるんだから! 響は本命出来たら真っ先に手出す! 我慢できるわけがない!」
私はまたそっと,頭を引っ込めた。
動揺した自分が分からない。
本命なんて,本当に架空で。
私のことなんかじゃ,本当になくって。
『最低限キスまで手出させてくれたらそれでいいよ』
恋愛観も,響くんはあんなこと言える人で。
『響は本命出来たら真っ先に手出す! 我慢できるわけがない!』
だから私よりも響くんを知っているだろうあの女子生徒の言葉も,きっと間違ってはいなくて。
だから私は,やっぱり違うんだって。
そんなの当たり前で,分かってることなのに。



