「今度の球技大会,見てて。俺だけ,応援してて。それで今日は……やっぱり行かないで。俺を選んで,残ってて」
とーかちゃんと私を呼ぶ声。
6回のコール,辛抱強く鳴るスマホ。
思わず手を引きそうになって,だけどその手は一転して強く掴まれた。
口を2·3度開いては,閉じる。
空いた手で,私は黙ったままスマホを取り出した。
響くんに見つめられながら画面を確認すると,やっぱり佐久間くん。
確認してすぐ,ぷつりと着信が途絶える。
次に
『桃花?』
と言うメッセージと,スタンプの通知が来た。
トンっと軽くタップして,繋がっている右手へ無意識に,初めて力を加える。
響くんが小さく反応したのが私に伝わってきて,私は少しずつ文字を打ち込んだ。



