あっさり引いてくれた響くんに,言い知れぬ寂しさを感じながらも。

それでも今日はと教室を出ようとした放課後。

私は何故か,またあの空き教室で響くんに拘束されていた……。



『せんせーが呼んでる』



なんて嘘っぱち。

わざわざ私の前を歩くところで何かおかしいと気付けば良かった。

突然立ち止まりくるりと振り返った響くんは,私の後ろに回り,左手を捕らえ腰を引き。

いとも簡単に私を教室へ引き摺り込んだのだ。

そこまでして何をするかと思えば,響くんは抵抗する私を後ろから抱き締め,ホワイトボード前の段に座っている。



「ひ,響……! どういうことなんですか! あっ諦めてくれたんじゃ……」

「なわけないじゃん。何で俺が黙って行かせてあげないといけないの,とーかちゃん」

「だっだって!! 響,朝そっかって,分かってくれたんじゃないんですかっ」

「あの時は言うだけ言っても仕方ないって,殊勝にしてただけ。その時になって捕まえた方が早いでしょ」



うーうーと腕の中から逃れようとしても,圧倒的に響くんの方が強い。

それどころかびくともしないお陰で,わたしは安定したまま変なポーズをとっている人になっていた。