全神経で拒んでしまった。
気持ちが纏まらないまま,されたくないと思った。
グッと,私の頬を挟む響くんの力が強くなる。
少し痛いくらいだ。
驚いて見開くと,むにゅっとまた潰された。
「……とーかちゃん,かわいそーだね」
憐れむような言葉と裏腹に。
響くんの瞳には,怒りが灯っている。
誰に向けたものなのか,正面からそれを見ている私は怖いと思った。
「響く……響?」
今さら響くんとの約束を思い出して,呼び変える。
私達は友達なんだと思えば,こんな路地裏で,もう恥ずかしくもない。
響くんがようやく目元を緩めた。
けれど今までで1番,何を考えているのか分からなくて,構えてしまう。
「とーかちゃん,キス,しよっか」



