見えるのは遠くの,オレンジと紫の空色だけ。 不審者,男。 それだけで満たされてしまった頭は,瞳からの情報に自然と緩んでいく。 「なっ……何してるんですかっ響くん!!!! すっごく怖かったんですけど!!」 滅茶苦茶な感情のまま,私は涙声を発した。 ゆるく上がると思った響くんの口角は,上がらない。 何を考えているのか分からない瞳が私を捉える。 「なに,泣いてんの」 「説明,出来ません」 どうしたらいいか,分からないんです。 「なに,泣かされてんの」 「あの,手」