「ふ…っ……ぅ」
どうして突然泣き出してしまったのか,自分でも分からないまま。
決して学校には辿り付かないだろう知らない道を縫って走った。
人の家からはみ出した植物が,私の甲にシュッと線を引く。
私は止まることを忘れたおもちゃみたいに,少しも足を緩めなかった。
私の世界は,どうなってしまったんだろう。
2人は私を騙しているのに。
2人とも,どうしよもなく本音で私を好きだと言う。
それは,間違いない。
ならもう,私は何も言えなくなってしまう。
「……ぁ」
はぁと漏れるのは,熱く哀しい吐息。
何年も愛され住まれているだろう住宅を1つ通りすぎて
「っふあ?!?」
影から私を強引に引き入れた存在に,感情がゾッと恐怖一色に染まった。
暗い,暗い路地裏。



