だっ抱き締められてしまった……!
そしてそれを許してしまった。
そう悶々としながら教室にいる私は,勿論一緒に帰るために佐久間くんを待っている。
支度の早い佐久間くんは,SHR終了後,直ぐにやって来た。
何気なく手を振って,佐久間くんのもとへと教室を出る途中。
私はつい,響くんを見てしまう。
優菜は部活のためか既にいなくて,私は少しほっとした。
佐久間くんに近づく私をみた優菜がどんな顔をするのか,想像するだけでも怖いから。
でも,まあ……
一緒に帰ること,佐久間くんから誘ったこと。
優菜も知ってる,よね?
だったら心配しなくていい。
きっとそうだと,私は頭を振った。
「じゃあ……帰る?」
待ってくれている佐久間くんに,躊躇いがちな言葉をかける。
「……はは,そうだな。何か久しぶりすぎて」
「ちょっと,緊張するね」
するりと,まるで私達に何事も無かったかのような言葉が溢れた。
言いたいことが分かってしまって。
佐久間くんもそんなこと思うんだって,思ってしまったから。



