「とーかちゃん,俺もうちょっといちゃいちゃしたいんだけど」
お弁当を片付ける私を見て,響くんが言う。
「えっ……でも,嫌なことはしないって」
「うん,だから……嫌じゃないって,言ってよとーかちゃん。……椅子ってケツ痛くない? 俺床のが好き」
変なことを言いながら,教卓の隣,段差になった場所まで私を道連れにする響くん。
私は勝手に柔らかく指先を取って歩かれていることにどぎまぎしながら,腰を掛けた。
なるほど,隔たりがない分,近い。
身体を支えるためだけに置いている手を重ねられると,なんだか文句も言えなくて。
血管の全てを震わすようなどきどきが,私は伝わりませんようにとだけ祈る。



