「明日誕生日なんでしょ,優菜に先越されたけど」
「なっ何で誕生日と……私がシュシュつける人って知ってるんですか? 私そんな話,あれ? してないですよね」
「うん,してないね。誕生日はほら,昨日交換した連絡先から通知が来たから。シュシュって言うの? それ。つける人とかつけない人とかあるんだ。普通に髪留めの仲間かと思った」
喜ぶかは分からなかったけど,似合うと思って。
そう自分の趣味だと言いながら私の手のひらに置いた響くん。
趣味って,似合うって。
そんなこと言われたら,使いづらいじゃないですか。
シュシュに視線を落とす私の手を,響くんはきゅっと包んだ。
「どうせ,佐久間煌芽にOKの返事したんでしょ? それ着けて帰ってよ」
OKしたんでしょ? って。
だってそれは,それが付き合うってことだから。
それに,響くんは何も言わなかったのに……
何だろう,この恥ずかしさは。
響くんは何を思って,こんなことをするんだろう。
「とーかちゃんが俺を独占しなくても。俺はするよ,とーかちゃん」
横だけ出している私の髪の毛を,響くんはくるりと弄った。
キノコの炒め物を,口に含む。
もぐもぐと口を動かしながら,私は響くんの触れた髪束に,そっと触れた。



