「まーまー,そんな顔しないでよとーかちゃん。とーかちゃんのわがままってことにして,ほら。私だけがいいって,ゆってくんない?」
「わた,し……だけが,いい」
「から?」
「それ以外は,別れて,ください」
私は響くんの期待したような瞳と甘い声の誘惑に,逆らえなかった。
「はーい。可愛い彼女に独占されてあげまーす」
普段より少し高い返事。
直ぐ様何かスマホを操作し始めた響くんは,ものの15分で。
「はいおーわり。これでゼロ。あははっ,見てとーかちゃん。優菜って今部活なんじゃないの? すっごい怒ってる」
え,優菜?
私には佐久間くんと別れるななんて言っておいて,自分は別れるの?
基準は,何?
メッセージを連投し,必死に離すまいとする姿が浮かぶ画面。
見せられて,居たたまれない。
それを平気で他人に見せてしまう響くんにも,何と言っていいか分からなかった。



