最後にそう謝ると,佐久間くんは脱力して。

うつむいたまま,出ていこうとした。

誰も,ううん,私も優菜も声をかけられなくて。

目で佐久間くんの動きを追っていると,最後に小さく,唸るように呟いた。



「……じゃーね,とう……」



か,は霞んで聞こえない。

けど,精一杯でもそれだけで伝えてくれて。

私も,ばいばいと口の形だけ作る。

消えた背中に,優菜も動いて。



「……ごめんね,桃花。これで全部丸く収まって,これでよしなんて……私,ほんとに思ってないから」

「……うん。……優,菜」



躊躇いがちに出た呼び掛けに,優菜が? と振り向いた。



「また,ね」



明日は,無理かもしれない。

それは私かもしれないし,優菜の方かもしれない。

きっともう元通りにはなれないけど。

この縁はまだ切れない。

細く繊細に繋がって,きっとこれからも切れない。

そんな気が,してる。

離したくないと,離してはいけないと。



「うん」



そう,泣きそうなその微笑みに思うから。

またね。

また,やり直そう。

ううん。

違う。

新しく……つづけよう。