「何を勘違いしてるのか知らないけど,自分の立場と行動と,全部一から考えたほーがいいよ。とーかちゃんが戻るわけでもないけど」



とーかちゃんに咎められるような事は1つもないって,口説かれてる途中なだけなんて。

軽くいなすような言葉を吐いて,響くんは安心させるように私を抱き締める。

マスコットにでもなったような気持ちで抱かれながら,もうとっくに口説き落とされているなんて事は言えない。

ほとんどなにも聞こえていなかったことに,ちょっとだけ安心したりもして。

優菜だけが,桃花の気持ち知らないの? なんて言うように小さく声をあげていた。



「佐久間くん」

「っ桃花! ごめんって,何回でも言うから。別れるとか言うなよ。別れたって有馬じゃ」

「っやめて。やめてよ,佐久間くん。無理だよ。佐久間くんとはやり直せない。それにさっきみたいなこと言うつもりなら……ほんとにやめて」



今でもずきすぎするの。

無駄だって分かってるのに。



「これから先の事は,佐久間くんには……関係ない,でしょ」



刺さると分かってた。

でもそれ以上の伝え方が分からなかった。



「関係ない関係ないって…っあるよ! …………っとーか」



すがらないで,佐久間くん。

ちゃんと,"私"を見て。

今の私は,佐久間くんを好きな私じゃない。



「……ごめんね,佐久間くん」