「今日,なんで呼んだの?」



珍しいどころじゃなくて,呼び出したのもこんな人から隠れるような場所で。

佐久間くんは俯いたまま,私を責めるように声を出す。

2人に流れる不穏さに,話の雲行きに。

俺を切るのかって,私は焦りに混じった気持ちを受け止めた。

まだ話を聞けていないから,佐久間くんのその反応がどんな気持ちから来ているのか分からない。

だから今は,ただ誤魔化しようの無い佐久間くんからの問いかけに答えるだけ。

私は瞳を閉じた。

口を閉じて,鼻で息を吸った。

瞼を持ち上げる。

全部分かってたのに,少し潤んだ。

そんな自分の気持ちが分からなくて,持て余して,唇が震える。

その震えたままの音は



「佐久間くん。私と別れてください」



途切れず,佐久間くんを逃がさないみたいに,真っ直ぐに届いた。

これで,向き合わずにはいられない。

もう,目に,耳に,心に。

その言葉を,誰もいない教室で。

佐久間くんは認めた。

可哀想なくらい動揺した,初めて見る顔。

私はその表情を,正面から俯瞰する。

佐久間くんは……

その表情を,私に隠していたんだね。