婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 抱き合うクロエとエーリヒから視線を逸らしていたアリーシャが、そう告げる。
「はい。わかりました」
 もう覚悟はできている。
 クロエはしっかりとアリーシャの目を見て頷いた。
 この日のために、彼女に守護魔法を学んで、それをしっかりと実行できるようになっている。
 クロエにとってこの一か月は、貴族令嬢としての立ち振る舞いを学ぶというよりも、この守護魔法を完璧にするために費やした時間だった。
 そうでなければ、エーリヒを王城に連れて行くことはできない。
「私の義妹が、異国人で魔導師であることはもう知っていると思うけれど、もう決まっているという婚約者がエーリヒであることは、誰も知らないわ。この私の義妹と婚約者に表立って絡む者はいないと思うけれど、何かあったら私に言ってね」
「はい、お義姉さま」
 クロエは淑やかに笑ってみせた。
 エーリヒが言っていたように、アリーシャの父であるマードレット公爵家は、かなり力を持っているようだ。
 それは魔女として生まれたカサンドラの母を側妃に迎える際に、多額の支度金を用意する必要があり、そのお金を王家はマードレット公爵家から借りたことにも関連していた。