婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 移民を貴族の養子にすることも、前例があったようで、思っていたよりもスムーズに手続きを終えることができた。
 だが、これほどの大貴族では初めてのことらしく、やはり注目されてしまうのは仕方がないようだ。
「それでも、クロエを見たら文句なんか言えなくなると思うわ」
 アリーシャはそう言って、うっとりとしたようにドレス姿のクロエを見つめる。
 あれからひと月ほど経過して、クロエも貴族令嬢としての立ち振る舞いが完璧にできるようになっていた。
「生粋の貴族令嬢みたいに洗練されているし、黒髪もとても綺麗。もしエーリヒが婚約者でなかったら、希望者が殺到したと思う」
 そう言ってもらえるのは嬉しいが、生まれは間違いなく貴族だから、何だかズルをしているような気持ちになってしまう。
 でもエーリヒの隣に立っても、誰にも文句を言われないようにするのがクロエの目標だった。だから公爵令嬢のアリーシャにそう言ってもらえるのは嬉しい。
(でも……)
 クロエは隣にいるエーリヒを見上げて、思わず溜息をつく。
 今まで騎士服や、冒険者として過ごしていた頃のラフに服装しか知らなかった。