婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 さすがに髪色を変えただけだ。
 父やキリフは気付かなくても、周囲の人間の中には、クロエだとわかってしまう人もいるかもしれない。
 どうすればいいかと悩むクロエに、エーリヒは言った。
「クロエの力を使えばいい」
「魔女の?」
「ああ。そうすれば、ふたりともクロエにはまったく気付かないだろう。おそらく今も、無意識に発動している」
「そうだったのね」
 いくら面識がなくとも、王太子の異母弟の婚約者だったクロエにまったく気が付かなかったのは、それが原因だったのかと納得した。
 エーリヒは自分のことなど誰も探さないと言っていたが、実際には王女もまだ彼に執着していた。
 さらにクロエの父は、自分の野望の弊害になると考えて、見つけ次第排除しようとしていたのだ。
 クロエは、エーリヒが外出するたびに、見つからないようにと願いを込めて送り出していた。
 それが、エーリヒを守ってくれたのだろう。
(よかった……)
 この魔女の力があってよかった。
 クロエは心からそう思った。

 それからふたりは話し合い、移民としてのクロエの設定を作り上げた。