婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 アダナーニ国王には子供が四人いるが、その中でも交流があるのは、同じ正妃の子である王太子と、まだ十歳の第三王子の間だけ。
 キリフは異母兄と異母弟、そして魔女である異母妹と交流がなく、その婚約者だったクロエも、正式に挨拶さえしたことがない。
 だから向こうも、たとえ髪色が元の色に戻ったとしても、クロエのことがわからないのではないかと思う。
 ここまでクロエを案内してきた執事はここで退出し、さらにアリーシャは部屋にいた侍女を下がらせた。
 これで、この部屋にいるのは、アリーシャとトリッド。そしてクロエだけ。
 エーリヒの姿はなかった。
「……突然呼び出してしまって、ごめんなさい」
 三人だけになると、アリーシャはそう謝罪した。
 移民としては、貴族に謝罪されたら受け入れなくてはならないだろう。
 クロエは、静かに目を伏せた。
「あの……。エーリヒは、どこですか?」
「もちろん、すぐに会わせるわ。ただその前に少し、私の話を聞いてほしいの」
「……」
 アリーシャの意図を探るように、クロエは彼女を見つめた。