婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 相手がどう出るかわからないが、敵対しても共存を選んでも、もう平穏な生活は望めないだろう。
(ああ、そうだわ)
 クロエは思い立ち、衣服などの荷物はもちろん、調理器具や購入した家具まで、すべてアイテムボックスに収める。
「うん、これでいいわ」
 どこで生きることになったとしても、これでこの家のものはすべて持っていける。
 最後に、少し惜しい気持ちはあったが、お風呂を作った部屋を元通りにする。
 もしこの家に戻ってこられたら、また作ればいい。
 そうしているうちに手紙に書かれていた時間が近付いたので、クロエは身支度を整え、何もなくなった家を出た。

 ギルドの外壁は、まだ崩れたままだった。
 依頼の掲示や斡旋などは、隣にある魔法ギルドのほうで行っているようだ。事情を知らなかった冒険者たちが、驚くように半壊したギルドの建物を見つめている。
 そんな人たちをかき分けるようにして、クロエはギルドに入っていく。
 内部は、だいぶ綺麗になっている様子だった。クロエが来たことに気付いたギルド員が、奥にある部屋に案内してくれる。
 今日は、ロジェの姿はないようだ。