婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 快適なはずのベッドは、何だか広すぎて寝心地が悪い。
 クロエは毛布を握りしめて、明日のことを考える。
(起きたらすぐにギルドに行って、迎えにきた人と会う。それから、その貴族の女性と会って……)
 手紙には、王女には渡さないと書いてあった。
 それから考えても、エーリヒのことをよく知っているのだろう。
 目的が何なのかわらないが、もし彼女がエーリヒと会わせてくれないようなら、強行突破も考えている。
(エーリヒと一緒なら、逃亡生活でもかまわない。この国を捨てて、誰も追ってこられないくらい遠くに逃げれば……)
 これから先もふたりで生きるためなら、何もかも捨ててもかまわない。
 そんなことを考えながら、ほとんど眠れないまま朝を迎えた。
 前世の記憶を思い出してから、ひとりで夜を過ごしたのは初めてだ。
 当たり前のように傍にいてくれたエーリヒの存在の大きさを、あらためて思い知る。
 ひとりでは、朝食の準備をする気にもなれなかった。
 ギルドに向かうまでの時間、ただベッドの上に座って、ぼんやりと過ごす。
(この家には、もう戻れないかもしれない)