婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 それに、いくらクロエの力が強いとはいえ、もっと強い者はいるだろう。
 王女の力だって未知数だ。
 クロエよりもずっと、力の使い方は熟知しているに違いない。
 敵の排除や復讐に拘るよりも、エーリヒと一緒に暮らせる穏やかな日常を大切にしたい。
(魔石が良い値段で売れたから、お金はだいぶ溜まったわ。でも、もう魔石を作ることはできないから、何か別の仕事を探さないと)
 今は体調不良で休んでいることになっているから、すぐには無理だけれど、働いてみるのもいいかもしれない。
 魔女の力は、アイテムボックスやお風呂場など、生活を便利にするために使おう。
 もし戦うことがあるとすれば、それはエーリヒを傷つけられたり、奪われたときだけ。
 何もなければ、移民のクロエとして生きていく。
 そう決めていた。
 けれどサージェも、養子縁組を申し出てきた貴族も、クロエのことを諦めていなかった。

 それを思い知ったのは、それからひと月ほど経過した後のことだった。
 あのあとも、エーリヒは冒険者として依頼を受け、ギルドにも通っていた。