婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 クロエに拒絶され、エーリヒに牽制されたサージェは、まだクロエが騙されているとか、利用されているだけだと言い続けていたが、もう相手にする必要もない。
 エーリヒと一緒に、さっさとギルドを離れることにした。
「これで、もう私に関わらないでくれたらいいんだけど」
 ギルドからだいぶ離れたところまで来て、クロエは溜息をつく。
「しかも、勝手に自分にふさわしいとか、自惚れが過ぎるわ」
「クロエの魔力と、クロエ自身に惹かれていたのだろう」
 エーリヒはそう言ったが、クロエには魔石目当てだとしか思えなかった。
「きっとあの人だって、欲しいのは魔石だけよ。私の話なんて、最初からまったく聞いていなかったもの。魔石や魔力目当てでなければ、私のことなんて、誰も……」
「クロエ」
 自嘲するようにそう言ったクロエの手を、エーリヒがそっと握った。
「クロエは綺麗だし、魔力なんかなくても魅力的だ」
「エーリヒ……」
 見惚れるほど綺麗な顔で、優しく囁くようにそう言われて、クロエは恥ずかしくなって俯いた。
 元婚約者や父に虐げられた過去は、前世の記憶が蘇った今となっては、思い出してもそれほど心は痛まない。