婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 同じ魔導師ならば、クロエの魔力が弱まっていないことがわかってしまうかもしれない。もともとそれなりの魔力に見えるように調整していたが、さらにそれを弱めた。
「これで大丈夫かな?」
 もともと自分にかけていた魔法なので、魔女の力を解放しなくとも、これくらいはできる。
 魔力を弱めたことを報告すると、エーリヒはクロエの身体に影響はないか、心配してくれた。
「うん。私自身には何の影響もないよ」
「そうか。じゃあ、行こうか」
 身体が弱っているという設定なのだからと、急に抱き上げられて慌てる。
「まさか、このまま行くの?」
「もちろん。魔力が弱まるということは、それだけのことだから。疑われないためにも、こうしないと」
「……うぅ」
 恥ずかしいが、疑われるのも嫌だ。
「嫌なら、顔を隠せばいい。さあ、行こうか」
 エーリヒはクロエを抱えたまま歩き出した。慌ててローブのフードを深く被って、顔を隠す。
(たしかに、これなら見えないけど……)
 それでも、恥ずかしさは消えない。
「ごめんね。重くない?」
「全然。これでも、鍛えているからね」
「……そうだったね」